今回は「課題とは何か?」という疑問に正面から向き合います。
経営者の視点から自社の課題を正しく定義できるかどうかが、課題解決の成否を左右します。曖昧な課題設定では解決手法がブレてしまい、望んだ結果が得られません。
この記事では課題の定義・企業課題の見つけ方を押さえ、生成AIを活用した補助方法まで紹介します。

「課題」とは何か?課題の定義
課題とは、「あるべき姿(理想状態)」と「現状(実際の状態)」との間に存在するギャップを埋めるために、解決すべき具体的な要因・行動テーマ」である。
つまり「問題(Problem)」そのものではなく、
“解決すべき焦点”にまで明確化されたものが「課題(Issue)」となります。

ここでいう「焦点」とは、「どの部分を、どんな目的で解くのか」を明確にした“ピント合わせ”のことです。
漠然とした問題を「この要因を解けば成果が出る」という形にまで具体化できたとき、それが「課題」と呼べる状態になります。
「問題」と「課題」と「目標」の違い
| 概念 | 定義 | 例(売上低下のケース) |
|---|---|---|
| 問題(Problem) | 望ましくない現象、または放置すれば悪化する状態 | 売上が前年比20%減少している |
| 課題(Issue) | 問題を解決するために明確化された取り組みテーマ | 新規顧客獲得チャネルの立て直しが必要 |
| 目標(Goal) | 到達すべき理想・数値的水準 | 半年以内に新規顧客数を30%増加させる |
課題の階層:課題を深掘りする視点
「課題」という言葉の理解をさらに一歩深めるために、ここでは課題を3つの階層で整理してみましょう。
| 層 | 課題の種類 | 内容例 |
|---|---|---|
| ① 表層課題(現象課題) | 目に見える症状 | 顧客対応が遅い、見積提出が後手に回る |
| ② 中間課題(要因課題) | 背景にある仕組みやプロセス上の問題 | 情報共有が属人化しており、担当者しか見積履歴を把握していない |
| ③ 根本課題(本質課題) | 経営・組織文化・戦略上の構造的問題 | 知識共有を評価する文化や仕組みが存在しない |



“課題の本質”とは、データから見える現象を超えて、
「なぜそれが起きるのか」「なぜ放置されてきたのか」を問うこと。
その問いを繰り返すほど、解決の方向性が明確になります。
企業課題の設定と解決プロセス:正しい課題設定で成果を生む方法
ここからは、実際に企業が自社の課題をどのように見つけ、どのように設定していくかを具体的に解説します。理論だけでなく、実践に落とし込むためのフレームワークも紹介します。
課題設定の手順:理想と現実のギャップから企業課題を見つける
ここでは実務的な課題の設定方法について解説します。
経営者の皆様が自ら考えられるように、以下の3ステップフレームワークを提示します。
【課題設定3ステップフレームワーク】
| ステップ | 内容 | 自社で考えるための問い |
|---|---|---|
| ① 理想(あるべき姿)の言語化 | 目指す状態を明確にする | 「理想的な状態とはどんな状態か?」 「誰が、どんな成果を出している状態か?」 |
| ② 現状の把握(可視化) | 現在の実態を客観的に整理 | 「現状の数値・実態・課題感は?」 「データ・社員・顧客の声から何が見えるか?」 |
| ③ ギャップの明確化と焦点設定 | 理想と現実の差を課題として定義 | 「何を埋めれば理想に近づくか?」 「最もインパクトが大きいギャップはどこか?」 |
課題設定の実践:フレームワークで自社課題を可視化する
ここでは紹介したフレームワークに沿って、架空の企業を題材に課題設定を実演します。
実際に課題設定の流れを体験することで、自社の課題設定に応用できるようにしましょう。
🏢 ケース概要(問題文)
企業名:株式会社◯◯製作所
従業員数:60名
業種:金属加工業(自動車部品のOEM供給)
【現状】
- 主力顧客3社に売上の70%を依存しており、ここ2年は単価引き下げ要請が続いている。
- 新規取引先の開拓を営業課に任せているが、営業担当は実質2名で、既存対応に追われている。
- 取引先からの見積もり依頼に対する回答スピードが遅く、他社に案件を取られることが増えている。
- 特に、見積もり回答まで平均3営業日を要しており、他社が即日回答する中で競争劣位に立たされている。
- 社内の図面・加工条件・見積履歴が個人フォルダに散在しており、情報共有がうまくいっていない。
【目指す理想】
- 顧客対応スピードを上げ、見積もり受注率を向上させたい。
- 営業以外の社員も一定の見積対応ができる体制をつくりたい。
- 属人化をなくし、社内にノウハウを蓄積できる仕組みを整えたい。
課題設定フレームワーク:回答例
| ステップ | 内容 | 株式会社◯◯製作所の例 |
|---|---|---|
| ① 理想(あるべき姿)の言語化 | 顧客からの見積依頼に対して、担当者が変わっても迅速・正確に対応でき、顧客満足度と受注率を高めている状態。 | 誰でも即時に必要情報にアクセスでき、見積精度が一定している状態。 |
| ② 現状の把握(可視化) | 情報が個人フォルダに分散。過去の見積履歴が共有されず、同じ内容を毎回探している。見積回答に平均3営業日を要している。 | 業務が属人化し、知識共有の仕組みがない。 |
| ③ ギャップの明確化と焦点設定 | 理想と現状の間にある差:情報共有とナレッジ管理の欠如。課題=属人化を解消し、見積対応を組織知に変える仕組みを整備すること。 | 具体的課題:「営業ナレッジの共有と検索性向上による見積対応スピードの改善」 |
解答に至るコツ・視点
- 問題と課題を混同しない:「見積が遅い」は問題、「なぜ遅いのか」を突き止め、「属人化」が原因ならそれが課題。現象ではなく構造を定義する。
- 理想を“数値+状態”で表す:「早くしたい」ではなく「3日→1日以内に短縮」など、測れる理想像を言語化する。
- 課題は“行動できる言葉”で書く:「情報共有が不十分」では抽象的。「検索性を高め、共有できる仕組みを整える」まで落とし込む。
- 解決策を先に考えない:「AIで解決できそう」と考える前に、本質的な原因構造を把握する。AI導入は“後工程”。
生成AIを使った発展的活用例
| ステップ | AIの補助例(プロンプト例) |
|---|---|
| 理想の整理 | 「他社の製造業が営業ナレッジ共有で成功した事例を3つ教えて」 |
| 現状分析 | 「営業日報・見積履歴から属人化の傾向を抽出して要約して」 |
| ギャップ抽出 | 「理想と現状の違いを3行でまとめ、最も改善効果の高い課題を提案して」 |
生成AIは「課題を発見する補助ツール」であり、「課題を決める主体」ではありません。最終判断は経営者が自ら行うべき意思決定領域となります。
このように、課題設定は「問題をどう表現するか」ではなく、「理想とのギャップをどう捉えるか」で精度が変わります。フレームワークに一度落とし込んでみるだけで、課題の本質が言語化され、次に取るべき行動が見えてくるはずです。
生成AIを活用した課題設定の補助:課題とはをAIで可視化
ここでは、これまで解説してきた課題設定の3ステップ(理想・現状・ギャップ)におけるAIの補助活用を整理します。
【AI活用の具体例】
| 活用フェーズ | 補助内容 | 生成AIの使い方例 |
|---|---|---|
| ① 理想の明確化支援 | 他社事例・業界ベンチマークを参考に「理想像」を可視化 | 「製造業で業務効率化に成功した中小企業の事例を5つ教えて」 |
| ② 現状把握支援 | 社員アンケート・顧客対応ログをAI要約・分類 | 「アンケート自由記述を『業務効率・人材・顧客対応』に分類して要約して」 |
| ③ ギャップ抽出支援 | 理想と現状の差をテキストで整理し、優先順位づけを提案 | 「理想と現状の差を3カテゴリで整理し、影響度順に並べて」 |



生成AIを活用する目的は「考える時間を増やす」ことです。
AIに分析や整理を任せることで、経営者は“より重要な問い”――「この課題を解く意味は何か」「解決後に会社はどう変わるのか」――に集中できます。
AIは経営者の思考を広げるパートナーであり、方向性を示すのは常に人です。


まとめ
課題とは、「理想と現実のギャップを埋めるための行動テーマ」と定義できます。
はじめに取り組むべきは、自社の理想と現状を明確に言語化し、その差分=ギャップを客観的に見極めることです。こうすることで、どこに課題があるのかが浮かび上がります。
また、生成AIは課題を検討・整理するための支援ツールとして有効に活用することができます。業務効率化を目指す際は、まず正しい課題の定義を行い、その後に行動計画を立て、AIによる補助の導入まで一連の流れで進めていくことが重要です。





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